第22章 分裂の時間
まだ…
まだ、足りない。
何で?
何が?
そこに、平然と辿り着けている人がいる。
ケイトには、もともと才能なんてなかった。
必死に頑張って、やっと築き上げてきたものだった。
それなのに…
平然と、それを捨てる選択肢を取れることが…
どうしても、気に食わなかった。
それまでに築き上げてきた日々も、積み重ねも……
それらすらも、捨てるようにも思えて
それを持てている奴が
それらまでをも切り捨てようとしているようにも思えたのか…
他の人たちの努力までをも
全てひっくるめて、切り捨てようとしているのと同意義ととらえたから
こんなに苛立っているのか…
その理由までは、定かではない。
それでも…
ただ、一つだけはっきりしていた。
苛立つ。
そう平然と選択することが、気に食わない。
そこで、切り捨てるのだとするなら…
それまで、ケイトが血みどろになりながら
傷だらけになってもなお、陰で必死に続けてきた努力は…
一体、何だったんだ?
何度も何度も立ち上がってきたのは…
全て、虚無に消えていく?
消されていく?
誰かの決定によって、砂山のように…?
あいつの努力も…
俺の努力も…
全員が全員、今までにしてきた努力まですべてを?
それを、一人だけで決めていいわけがない。
ましてや…
その努力も、涙も…弱音も……
俺は見てきた。
ぶつけてきてくれた。
俺は、それを支えたかった。
渚くんは、まだ知らない。
ぶつけられてないから、知らないのも仕方ない。
それでも…
それでも、俺は……
それだけは、許せない。