第19章 正体の時間
『茅野にこの髪形を教えてもらってからさ、僕は自分の長い髪を気にしなくて済むようになった。
目的とかどうでもいい。
茅野はこのクラスを一緒につくり上げてきた仲間なんだ。
全部演技だったなんて言わせないよ(微笑』
その渚の言葉に、カエデは涙を流した。
『うん…ありがとう…
もう、演技やめていいんだ…』
それに涙を流す中、周囲は微笑んでいた。
磯貝「殺せんせー。どんな過去でも真実なら、俺らは受け入れます」
殺せんせー「先生から聞きたいことがあるでしょうが
もう少しだけ待ってください;
ケイトさんが回復させたからか
あの一撃が重くて重くて、心臓の再生に時間が;」
ケイト「ごめん!!;」
そう叫んでから…
30分をかけて、とぎれとぎれになりながらも話してくれた。
あぐり先生との、捕らえられた実験場での出会い
一年間もの時を、共に過ごした日々
スラムの出生から、だまされるばかりの日々…
そして信じられるのは「殺せば人は死ぬ」ということだけ
弟子の存在、襲来してきた死神が2代目で裏切られたこと
死神と呼ばれる殺し屋で強かったこと
無戸籍であると同時に孤児であるのに
都合がいいとのことから、モルモットにされたこと
柳沢はあぐりの婚約者だったが、横暴だったこと
『見る』ということの
本当の意味を、あぐり先生から教わったこと
教師としての、最後の一年を過ごせるか不安だった彼女に触れたこと
あぐり先生のことを想っていたこと
あぐり先生を助けられず、目の前で死なせてしまったこと
「あなたになら、殺されてもいい。そう思えるぐらい大切だったこと」
そして、それは殺せんせーも同じで
殺せんせーはまた、私たちに同じ感情を抱いていることだった。
あぐり先生の言葉…
「残された時間をくれるなら、あの子達を教えてあげて」
その約束を、守るために…