第19章 正体の時間
失敗した。
カエデの動きを封じて
触手を抜くことに力を使えばよかった。
そうすれば、殺せんせーも茅野も傷付くことなんて…
でも、そうしたらきっと…
カエデは、心の中の叫びを解放できなかった。
どっちがいいかなんて
人によっては変わるんだよな、やっぱり…
私は、視野が狭くて
無視してないつもりでも、無視している風になっちまって…
嫌な思いをさせたことの方が多いと思う。
名前を呼ばれて、手を振り返すにしても…
手を中途半端に上げて、小さく髪に触ってから降ろすことしか出来ない。
そんな、照れ隠しみたいにやっちまって
逆に、傷付けてしまったかもしれない。
純粋過ぎるって、人からよく言われるけど
やっぱり、あんまり解らないよ。
だって…
誰もが、感情ってものを持ってるじゃん。
板挟みみたいになって、苦しんだりもするけれど
みんながみんな、各々の感じた心ってのを持ってる。
感情も、気持ちも…
失いたくないものも、離したくないものも……
私は、目の前に居る
カエデの命を…助けたかった。
私の中で、灯りとなってくれた。
どんだけ沈んでても、苦しくっても…
明るく元気で接してくれたお前のおかげで
私はいつでも、明るさを取り戻せた。
笑って、今って時を迎えられたのは
お前のおかげだって思ってる。
皆のおかげだって思ってる。
だから、救いたい。
護りたい。
なのに……
何で、動いてくれないんだよ。
この体は!;
いうことを聴かない。
ケイト「くそっ…
大丈夫だって、言ってた。
これからも、大丈夫だって思ってた。
なのに…
全然、大丈夫じゃないじゃんか…
くそっ;;」
支えようとする二人を振り切って、起き上がろうとするけれど
身体は、全く起き上がってくれなかった。
是が非でも起き上がるつもりだった。
今からでも、無傷のまま触手を引き離そうと思った。
なのに…
身体はもう、いうことをきいてくれなかった。
私はただ…
地面に、うつぶせることになった。
それから、再び竜馬とカルマに背を支えられて
見守る事しか、私は出来なかった。