第19章 正体の時間
シロ「最初に教室に入った時、驚いたよ。
あまりにも意外な人物がいたものでね。
雪村あぐりの妹、雪村あかりが
偽名を使って、あの教室に紛れ込んでいた。
驚異的なのはその執念だ。
発狂ものの触手の激痛にも汗一つかかず、1年間笑って過ごした
その精神力。
一切の殺意を悟らせなかった演技力。
殺し屋の素質は、あのE組で断トツだよ」
カエデ(役者業は事務所の意向で長期休業中…街で私に気付く人もいなくなった)
想いを馳せるのは、遠い過去。
あかり「今の方が気が楽だな~、普通に就職目指そっかな…」
その時の私はまだ、気付いてなかった。
姉ちゃんを迎えに来た時に
まさか、あんな大ごとになるなんて…
私が中に入ろうとした直後のことだった。
姉ちゃんがいると思った建物が
いきなり大爆発を起こした。
子供だった私の体は
大人よりも早く、その現場に辿り着くことができた。
その時、目に焼き付いたのは…
触手みたいなものに包まれた人に
姉ちゃんが抱き締められていて、飛んでいったところだった。
あかり「お姉ちゃん…
お姉ちゃん…!?」
必死に呼びかけるも、何の応答もなかった。
私の目から見ても…
もう既に死んでいるのは、明白だった。
ふと、溢れだしそうになる涙よりも
それよりも強く、私の中に溢れてきたのは…
大切な人を殺されたことで沸き上がる、殺意だった……
その近くには、液体の容器があった。
後で、触手の種だと知った…
なぜそれを持ち帰ったかは説明できない。
ただ、あの見たこともない怪物に対抗する手段は
この中にしかないと直感していた。
試作人体触手兵器…。
人間に後天的に移植するタイプ…
強大な力を得られる反面、メンテナンスを怠れば地獄の苦痛…
関係ないよ。
姉のかたきを討つため、椚ヶ丘に転入した。
その姉の隣に置かれた
メモ通りなら、E組の担任になるはずだったから。