第17章 空間の時間
理事長「ふっ(微笑)
君には、そう見えるのかい?」
そう笑う理事長は、どこか寂し気で…
そう意味をとられたことに対して、嬉しそうにも視えた。
ケイト「理事長…
功を奏してか、私は今の私になれて凄く満足している。
おかげで、大事なものがはっきりと視えた。
視えるもんが醜いから、汚いから…
その力を持ってるせいで、余計に苦しくてどうしようもなかった。
醜いもん、顔面に押し付けられて
その人の持つ本質さえも見失いかけたことだってあった。
理解されないで、苦しみ続けて…
負担をかける、迷惑をかけるって思ったら
誰にも、ずっと相談できないままでいた。
その中で差し伸べてくる手もあった。
でも、それは
光の中に、どす黒い闇・利用してやろうって魂胆があった奴だった。
それも、はっきりと
この両目で視えてた。
何度も、潰そうとしたよ。
こんなもの、見えるくらいなら見えない方がいいって
何度も思って、消そうとした。
でも…そっちの方に目を向けなきゃいいだけだったんだ。
見えるからって、何でも目を向けていいわけじゃない。
大事なものだけに、目を向ければいい。
その人の本質、真心、愛情、思いやり、感情…
色んなものがあって、人って人格が成り立ってる。
その人にしかない、大事なものがそこにはある。
それに気付くことができたのは…
ここに来れたからだ。
見える世界も広がった。
見なければいけないものも、ちゃんと解った。
その点のみにおいては、感謝してるよ。本当に…
だから、教えて欲しい。
気に食わないだか
そういう偏見や想い、湧き出てくるもんは捨て置いてさ…
私は、あんたが気に食わなかった。
差別される側の気持ちが解ってるから、余計に許せなかった。
でも…捨てたもんじゃないって思えた。
だから、ちゃんと向き合って知りたい。
頭から否定するんじゃなく、ちゃんと向き合いたい。
知りもしないまま否定してたって
それはただ…
勝手に決めつけて、逃げてるのと同じように想えるから。
人の本質も人格も、それまでの経緯による今の道も…
向き合わなきゃ
ぶつかり合わなきゃ解りっこないって、ちゃんとわかってるから」
真剣な目で語り続けるそれに
僕等は…
無言で聴き入っていた。