第16章 期末の時間 2限目
それまでの人生になぞらえて
誰にでもわかるように、誰にでも伝わるように…
しっかりと書かれていた。
後々になって聴いて見ると
それを願いながら、書いたらしい。
その一節を取り上げてみると…
結構、感慨深かった。
『感情を味わった日…
それは、生まれてきた瞬間だと思う。
ただ、外に出て眩しいという感情だけじゃない。
息を吸って、吐いて…それに伴う感情だけでもない。
一つの命が産まれて
それが喜ばれ、涙し、可愛いと思い、幸せを願うなど…
様々な感情の渦の中
今という時に至るまでの想いの中
初めて外に出て
それまでに積み重なった感情に、触れたように感じる。
それまでは、母の内側から感じていた。
それを、今度は生身で
肌を通して、入ってくるように感じる。
それが、初めて感じるものであり
一つの世界だったと、私は思う。
誰でも味わう、感情。
それには、正と負がある。
それらは
大きくなるにつれて、詳しく知っていった。
最初こそ、楽しいや嬉しいばかり…
純粋なもので、それらを純粋に受け止めていた。
だが、次々に分かるようになっていったのは
そんなものではなかった。
怒り、哀しみ、憤り、憎しみ、苦悩…
色んな負の要因が、目の前に繰り広げていった。
気に食わないなど、様々な要因からぶつけられる
たくさんの悪口雑言、暴言、偏見、差別、
言葉の暴力もあれば、実力行使の暴力もあった…
様々な葛藤が、胸の内に拡がっていった。
そして、その闇は
成長していく時に従って、次々に膨れ上がっていった。
不満、反感、苛立ち、憎悪、絶望、
誰にもぶつけられない
相談さえもできない苦しみが、胸の中に集っていった。
ヒトという存在を、憎みたくもなった。
世界には、よどんだものばかりで
理不尽ばかりで、嫌いになりかかっていた自分もいた。
それでも
ぶつけていいものではないことは解っていた。
そういう目に遭ってきたから、余計にそうは思えなかった。
そんな中で、一つだけ変わらないものがあった。