イケメン王宮、真夜中のシンデレラ/ALLキャラ短編集
第8章 二人のハロウィン~アルバート編~
アルバート「…そういえば、今日の貴女の格好はバンシーのようですね」
「バンシー…?」
意味が分からず首をかしげると、アルバートはふっと頬を綻ばせた
アルバート「女の妖精のことですよ。……死を予告するとされている妖精ですが」
「…っ、それは一応、褒められているのでしょうか…?」
私が困って眉を下げると、それを見てアルバートは眉を寄せた
アルバート「…それくらい、自分で考えて下さい」
それを聞いて、ふと今日はハロウィンであることを思い出した私は、恐る恐るアルバートに声をかけてみた
「アルバート、…トリック・オア・トリート」
アルバート「…は?」
驚いて固まってしまったアルバートを気に止めず、私は続けて言った
「アルバート、お菓子をくれないと悪戯します…よ…?」
そう言って私がアルバートをじっと見つめると、眉を寄せたアルバートは盛大な溜め息をついた
アルバート「…私がお菓子を持ち歩くように見えますか?もしそのように見えるなら、貴女の目は節穴ですね」
そう言って素っ気なく踵を返して自室へと向かおうとしたアルバートの腕をひき、私は背伸びをしてアルバートの眼鏡を取った
アルバート「…っ!!…これは、何の真似ですか」
眉を寄せたアルバートの姿が、眼鏡を外すと少し違って見えて、私の鼓動はトクンと音を立てた
(アルバート…格好いい…)
思わず私がぽーっと見とれていると、アルバートがふいに私の顔を覗きこんで、眼鏡を取り返そうと腕を伸ばしてきた
アルバート「…全く、私は眼鏡がないと何も見えな…」
「あっ…」
後ずさった私が転びそうになると、アルバートはすかさず私の手を引いて受け止めてくれた
「…っ!!えっ…今…」
手を引かれた時にふいに唇に触れた柔らかい感触に、私は呆然とした
(今、アルバートの唇が…)
そう思い、私の顔がかっと赤くなるとアルバートは私の手から眼鏡を奪い取った
アルバート「今のは事故です。…故意ではありませんから、勘違いしないで下さい」
そう言って頬を真っ赤に染めながら去っていくアルバートを、私はただ黙って見送るのだった