第15章 温泉旅行へ*2日目午前編*
「三成君のご飯持ってきたんだよ。食べる?」
「ありがとうございます。そういえば、お腹が空きました」
食事の膳を、書物を脇に追いやり文机に乗せる。用意してあった茶器で、お茶も入れてやった。いただきます、と手を合わせ、行儀よく食べ始めた三成。
「桜様、食事はお済みですか」
「うん、ごめんね…。さっき食べちゃった」
「そうですか…。ぜひご一緒したかったですが、残念です」
しゅんとする三成が、大きな犬のように見えて、桜の胸がきゅんとする。
「次のご飯は、一緒に食べよう?」
「はい。…約束ですよ?」
「うん」
桜との約束に元気を取り戻して、三成は綺麗に食事を終えた。
「昨日、あの後よく眠れたよ。ありがとう」
「それはよかったです。桜様は、元気に笑っていらっしゃるのが一番ですから」
食後にお茶を飲みながら、三成が笑う。
「さて…桜様。何かしたい事などはおありですか?」
「でも三成君、まだ途中だったんでしょ?」
広げたままの書物を指して三成を見れば、すまなそうに頷いた。
「つい夢中になってしまいましたね。しかし、今は桜様とのお時間が大切ですから。これはまた後に読みますよ」
「うーん…」
山積みになった書物を見渡して唸る。この片付けは大変なのでは。