第15章 温泉旅行へ*2日目午前編*
「おはようございます」
秀吉が入ってきて、皆の動きが一瞬止まるが、普段通りの様子に内心ほっとする。
あ…秀吉さん。
秀吉の様子を目で追っていた桜と、秀吉の目があった。
「おはよう、秀吉さん」
「ああ、おはよう。桜」
挨拶をすれば、にっこりと笑って返してくれた秀吉に安心して、桜の顔も綻ぶ。
「見てると何か腹立つな」
「奇遇ですね、俺もです」
2人の雰囲気を見て政宗と家康が心の同盟を結んでいることには、二人は気付いていない。
「おい、三成を知らないか」
「今日はまだ見てないぞ」
政宗の返事に、部屋にいなかったからここにいるかと思ったのに、と考える秀吉。桜の脳裏には、昨夜の三成の様子が思い出される。まさか。
「…秀吉さん」
「ん?」
「三成君、昨日の夜書庫に行くっていってたから、もしかしたら…」
「ああ…」
それだ、と頷く。
「桜、飯の後でいいから、様子を見に行ってやってくれるか?」
「うん、分かった」
午前中は、三成君なんだね。
秀吉の頼みの意味を正確に理解して、桜は力強く頷いて見せた。