• テキストサイズ

【イケメン戦国】紫陽花物語

第15章 温泉旅行へ*2日目午前編*




…そういえば。昨日は秀吉さんが桜を入れてやったんだったな。


湯上りの桜が他の男と一緒なのを想像しただけで、怒りにも似た嫉妬心が湧く。



「桜、来て」



手を引いて、廊下を進む。



「どこ行くの?」

「外。…少し、散歩」

「うん」



このまま部屋に返したり、広間へ向かわせれば、必ず誰かと遭遇するだろう。せっかくだから、せめてこの子の火照りが引くまでは二人でいたい。

誰にも会わずに外へ出られて、安堵する。ちゃっかり手を引いたまま歩き出した。



「涼しい」



能天気に笑う桜に脱力する。家康とて湯上りだから、確かに気持ちは分かるけれど。



「よかったね」

「うん、ありがとう」



嬉しそうな桜の笑顔がまた可愛くて。景色を眺めるふりをして、赤くなった顔をごまかした。

そのまましばらく宿の周りを散歩していると、川の対岸へ渡る橋のたもとまでやってきた。眼下には川。自然と立ち止まる。



「桜」

「ん?ちょっ」



呼ばれて家康の方を向いた桜の両頬を、家康の両手が挟み込む。何かを確かめるようにぶにっと力が入る。



「なにするの」

「よし…戻るよ」



火照り、引いたな。



一人納得したように頷いて、家康はまた桜の手を引いて来た道を戻る。行動の意味が分からず、桜は頬をさすりながら大きな疑問符を浮かべていた。
/ 399ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp