第14章 温泉旅行へ*1日目夜編*
皆さん優しいです、と嬉しそうに笑う三成に、それはたぶん少し違うと思うけれど。それ以上に、三成の気遣いが桜の心を淡く満たしていく。
「ありがとう、三成君。こんなに綺麗な星が見られて、すごく嬉しい」
「いえ。私も、桜様の美しい横顔を拝見できて、とても得した気分です」
あくまでも悪気無く、嬉しそうに微笑する三成。美しい、なんて言われて顔に熱が集まる。灯りを消していて助かった。
「…さて、お体が冷えてしまいますね。そろそろ中へ入りましょうか」
「そうだね」
「私はこのまま書庫へ向かいますが…桜様はどうされますか」
「部屋に戻って、寝ようかな」
三成にならって立ち上がりながら答えた。今の穏やかな気分なら、きっとゆっくり眠れる。
「そうですか。では、お部屋までお送りしますね」
「大丈夫だよ、すぐそこだから」
「いけません。何があるか、分かりませんので」
どこか真剣な三成の雰囲気に、頷くしかない桜。素直に送ってもらって、部屋の前で別れた。
寝間着に再び着替えて、横になる。間もなく訪れた心地よいまどろみに身を任せて、そのまま眠りについた。