第14章 温泉旅行へ*1日目夜編*
いやいや、そんなこと。
いやいやいや…まさか。
「ありえないよ」
部屋を出る前に秀吉に行った言葉を再度口にする。全員が?まさか。
「まあ、明日になれば分かる」
そう言ってたけど。いや、そりゃ分かるだろうけど。
「これがモテ期か…」
いや、ふざけている場合じゃない。本当に全員が自分を想ってくれているとしたら?
「どうしよう…」
正直、誰かから告白されたこと自体初めてだったのだ。慣れていないことが3度も続いて、既に満身創痍だというのに。
だが、今目下の問題は。
「お腹空いた…」
広間へ行って食事をとりたい。しかし、すぐに顔に出る自分が、皆の前へ行って平然とご飯を食べられるか、それは無理だ。
すでに今日を過ごした政宗や光秀だけならまだしも。桜は、自分の部屋の前の廊下をもう何度も往復していた。
「何してるんだ、運動か?」
「わっ!?」
突然話しかけられて飛び上がる。政宗がお盆を持って立っていた。
「びっくりした…」
「そりゃ悪かったな」
あまり悪いと思っていない声色で、笑う。ほら、と差し出してきたお盆には。
「ごはん…」
「宿のあいつが、お前が起きたからって飯用意しようとしてたから、ぶんどって持ってきた」
広間まで行くのも面倒だろ、と笑う政宗が、神様に見えた。