第14章 温泉旅行へ*1日目夜編*
ぺこり、と頭を下げる。辿々しかったけど、言いたかったことは言えた。秀吉の顔を見続けられず、たまらず下を向く。
「桜…」
「…?」
名前を呼ばれ、無言。気になって顔を見上げる。戸惑うような表情だった秀吉が、目があった途端ににっこりと笑った。
眩しいくらいの笑顔に、顔が熱くなる。
「…お前に嫌われたと思ってた」
「嫌わないよ!」
慌てて否定すれば、もう秀吉はいつもの笑顔で桜の頭を撫でる。
「俺はいつでも待ってる…お前の気持ちがどっちだとしても」
「…ありがとう」
ほっとしたように微笑む桜につられ、笑う。もう駄目だろうと思っていたせいで、想いあった訳でもないのに、やたら嬉しい。
こんなに自分を思って言葉を紡いでくれる姿に、目が離せなかった。
好きだ。本当に、好きだ。想いが溢れて止まらない。それを諦めずにいられることが、こんなにも嬉しいとは。
しかし、この優しい子は、この先まだ頭を悩ませねばならない。泣くのはもう充分だろう。ならば、もういっそのこと。
「桜…言っておけば心構えができるだろ」
「何…?」
何となく身構えている桜がおかしくて、自然と笑みが溢れた。
「明日、残り三人と予定がある。皆…恐らく同じようなことになるぞ」
「同じようなこと…?!」
「たぶん全員から口説かれる」
「っええええー!?」