• テキストサイズ

【イケメン戦国】紫陽花物語

第14章 温泉旅行へ*1日目夜編*


夕食を楽しむ桜を、政宗は眺める。吉次からお盆を取ってきたのは嘘ではなかったが、それを指示したのは信長だった。



「桜の部屋まで持っていってやれ」



貴様が適任だろう、と。周りに有無を言わせない信長の言葉。

願ってもない役目に指示通り来てみれば、桜は部屋の前をうろうろと考え事をしながら歩き回っていて。それはそれで面白い見せ物だったが、その目元が赤くなっている事に気づいた時、政宗は密かに動揺した。



「そんなに見られてると、食べにくいよ」

「悪いな。お前が旨そうに食べるのが可愛くて、見惚れてた」

「いつも一緒に食べてるのに」



照れたような顔でくすりと笑う。政宗の中に燻る熱情に、静かに火が灯るけれど。


今は、駄目だ。


妙にすっきりとした顔はしているものの、こんな桜に手を出せない。


泣いたのか。


拳を握り締めていることに気づいて、桜に気づかれないように息を吐く。

違う意味での涙なら、いくらでも流させたい所だが。好きな女が、目元が荒れるほど泣くところはみたくない。

普段の政宗なら、この機に乗じて触れて、慰めて。あわよくば抱き締める。

けれど、広間から出ていった秀吉の様子と、信長の言葉と、桜の顔と。総合して考えれば、今そういう行動をとるのはあまり賢くないように思われた。
/ 399ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp