第13章 温泉旅行へ*1日目午後編*
傷つけてしまったよね、あんな泣き方をしたりして。
乱暴に涙を拭っていたせいでひりひりと痛む目元に触れる。
―――悪かった
あんな顔をさせてしまった。押し倒された瞬間こそ驚いてしまったけど、涙が出るほどの恐怖も嫌悪も感じてはいない。
涙の理由どころか、泣いている事にも気づかないなんて。
「なんて馬鹿なんだろう」
大事な人を傷つけて。想ってくれる気持ちにも、満足に答えを返すこともできていない。
ぽたり、と畳に雨が降る。
ああ
綺麗な畳も
着替えたばかりの着物も
また濡れてしまう