第13章 温泉旅行へ*1日目午後編*
「ありがとう」
「気にするな」
「それでこそ母親だな」
「何だとこら」
桜には笑みを向け、光秀には一睨みして立ち上がる。
「来い桜。そのまま風呂に入れ」
「え、でも…」
「俺が外で見張っててやる。約束しただろ?どうせ、入れてやろうと思ってた」
人好きのする笑みを惜しみ無く桜に向ける秀吉。しかし、自分が犯した失態のせいで秀吉に見張りをさせるのは、何とも居心地が悪い。
「でも…」
「だーめーだ。お前の意見は聞かないぞ」
桜を廊下にあげ、先にいってろと促す。ありがとうと小さく言って、桜は風呂へ向かった。
「光秀…昼は皆でという話だったはずだが」
「そうだったか?…忘れていた」
「嘘つけ!」
「親切に風呂に入れてやるのはいいが、理性を失くすなよ」
「そんなことにはならねえよ。お前終いには殴るぞ」
眉をひそめ、秀吉は光秀を置いてその場を離れ…ようとして振り向いた。
「御館様がお怒りだ」
「そうか」
秀吉の言葉にも、表情を変えることなく答える光秀。秀吉の溜飲は下がることがなかった。