第11章 温泉旅行へ*1日目午前編*
一方その頃。
腕を掴まれたまま、私は政宗と一緒に廊下を歩く。どこに行くのか分からないけど、何か用事があるんだろうから、とにかくついていく。
ぴたり、と政宗が何もない所で立ち止まる。当然後ろを歩く私の足も止まるわけで。
「どうしたの?」
後ろ姿に尋ねると、振り返った政宗と目が合う。
「どこに行きたい」
「…どこかに向かってるんじゃなかったの」
拍子抜けしてがっくりと力が抜けた。とりあえずあの広間を離れたかっただけみたい。
「私達だけ?」
いつもは、誰かと二人でなんて絶対にない。何処からか誰かが現れては、結局皆でいることが多くて、騒がしくて…まあ楽しい。
今朝もそうだった、秀吉さんと馬に乗った時も静かで、不気味だったのを覚えてる。
「俺と二人じゃ不満か」
ちょっと拗ねたような顔をした政宗…可愛い。ふるふると、横に首を振ってみせると、あっという間に機嫌良くなる。
「しばらく俺と一緒にいろよ。…何かしたいこととか、あるか」
「なんでも、いいの?」
「もちろんだ」
余裕たっぷりに頷いてくれる政宗の言葉に少し考えてから…、
「じゃあ、見て回りたい。来たばかりで、部屋も見てないし」
「確かにな。よし、行くぞ」
改めて差し出された政宗の手をそっと握ると、その手をぐいっと引っ張られた。あっと思う間もなく、額に柔らかな感触を感じて、慌てて顔を上げる。