第10章 温泉旅行へ*出立準備編*
「お、おい?どうした」
政宗が横から覗きこんでくるけれど、応える余裕がない。何とか飲み込んだけど、口の中が燃えてる…!
「それ、辛いほうが美味しいでしょ」
家康がしれっと言う。
お、おまえかー!
「…かけたのか?!」
「それほどは」
政宗と一緒に椀を覗きこむ。
さっきはろくに見てなかったけど、真っ赤。
でも、家康のものほどじゃないかな…。
一応、加減はしてくれた…の?
「桜、茶だ」
秀吉さんが、お茶の入った湯呑みを渡してくれる。
「あ、ありがと…」
お茶を飲み干して、ようやく少し落ち着いた。
まだ、ひりひりするけど…。
涙目になっちゃったよ、もう。
「家康!辛いよ!!」
「大げさじゃないの?」
「じゃあ、食べてみてよ」
疑い深いな、家康は。
箸で煮物を取り上げて、あーんするように指し出した。
あれ、なんか皆の雰囲気が怖い?
…気のせいかな。
ぱくっと食べた家康が、しばらくもくもくと咀嚼して、一言。
「辛くないけど」
「ええっ」
「桜、家康に食わせても意味はないぞ」
秀吉さんの隣に座る光秀さんが、意地悪く笑ってる。
「こいつは辛味に関して常軌を逸してるからな」
「まさか食に関して光秀さんに言われるとは思いませんでした」
家康、不服そう。
まあ、光秀さんも食べ方普通じゃないし…。