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【イケメン戦国】紫陽花物語

第31章 キューピッドは語る Side:M <豊臣秀吉>





夜が明けた。

今日は巳の刻から会議が始まる。恐らく昼を挟んで夕刻まで。もしかしたら、そのまま宴になりそうな勢いだな。


昨日の秀吉の様子が気になって仕方がないが、俺も軍議のための仕事の最終調整をしなくてはな。

今回の軍議の議題は、近隣諸国で頻発する小競り合いと、動きの怪しい越後についてが主だ。放っていた斥候からの報告と、俺の集めた情報をまとめて…信長様に的確に進言しなければならない。

既に出来上がっていた書類をもう一度検めても、特に不備は見受けられない。…よし。



城の大広間に、俺は誰よりも早く到着した。それは何より、ここに入ってくる秀吉の顔が見たいからだ。



「おはようございます、早いですね」

「おはよう、家康。疲れは取れたか?」

「…まあ」



比較的早く広間へ入って来た家康が、俺の隣に腰を下ろした。その曇った表情から察するに、心労は消えていないようだな。



「おはよう」

「おはようございます」



三成と共に秀吉が広間へ足を踏み入れた。それとなくその顔を伺い見れば、表情こそ普段と何ら変わりないものの、その眼の真剣さはやはり、何か心に決めた事を思わせる。

秀吉の眼が、三成を鬱陶しそうに相手する家康にちらりと向けられた。ふん、やはり思った通りだな。

…駄目だ、秀吉が動き出したら、笑わずにいられる自信がない。

俺達三人、それぞれの思惑が交錯するなか、政宗と、最後に信長様が上座へ腰を下ろして、軍議が滞りなく進んでいく。



「…よし、これよりしばし休憩とする。秀吉、さとみには声を掛けているだろうな」

「はい。昼食から顔を出すよう、伝えてあります」

「良し」



ぱちん、と音を立てて扇子を閉じ、信長様がニヤリと笑った。その眼の奥が、悪戯っぽく輝いて見えるような気がするが…。

政宗の陣頭指揮のもと、手際よく人数分の食事が用意されていく。俺の前にも膳が置かれ、ホカホカと湯気を立てている。

…全く、最初から全部混ぜておけば手間が省けていいものを。


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