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【イケメン戦国】紫陽花物語

第25章 それゆけ、謙信様!*猛進編*





「ここは、みたらしが絶品なんだ」

「いただきます」



信玄は、この前とは違う茶屋へと桜を連れて来た。運ばれてきた団子を、嬉しそうに口へと運ぶ。



「信玄様は、お団子がお好きなんですね」

「ああ、というよりは甘い物なら何でも好きだ」



お茶を手に取り、ごくんと飲んだ信玄は、でもなー、と顔を上げた。



「俺の可愛い忠臣が、俺から甘味を取り上げるんだ」

「どうしてですか?」

「食べ過ぎだって言ってな。甘味のない生活なんて俺には耐えられないのに」



信玄の言い方が切実で、桜はついふふっと笑い声を上げる。



「信玄様って、面白い方ですね」

「……」

「どうかしました?」



じっと桜の顔を見つめた信玄が、ふっと相好を崩した。小さな声で、参ったな、と呟くと、桜へと改めて向き直る。



「君のその笑顔に、見惚れてた…美しくて」

「そんなこと…」



初対面の時から、可愛いなとは思っていた。けれど、何気なく見せてくれた笑顔の輝きは、一瞬信玄が言葉を忘れるほど魅力的で。

口説き文句ではない、本音から出た信玄の言葉に照れたように目を伏せる桜のその表情一つも、見逃したくないと思ってしまう。



「本気に、なりそうだ」

「え…?」



低くなった信玄の声と、熱の宿るその瞳にたじろぐ桜の腰を捕まえる。優しく抱き寄せて体を近づければ、羞恥から桜の顔が瞬時に赤く染まる。



「し、信玄様…」

「君は可愛いな、桜。あの子達が夢中なのも、分かる…」

「あの子達…?」



自分の肩に寄り掛からせた桜の髪を撫でて。抵抗しても動けないことを察して、諦めた桜は大人しい。

幸村と…恐らくは、佐助も。彼らと桜の恋路を応援してやるつもりだった信玄の心に影が落ちる。



「桜」

「…はい」



身じろぎをする桜の帯で、揺れる飾り。それを贈った時よりも、信玄の心は厄介な感情に囚われている。


桜をこのまま、自分の物に出来たら。


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