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【イケメン戦国】紫陽花物語

第24章 それゆけ、謙信様!*遭遇編*





翌朝。皆が集まって朝食を摂りながら、仕事の進捗や明日の技能大会について情報交換をしている。

末席で共に食事を済ませた桜は、長引きそうな話を聞いていては信玄との約束に間に合わないと、一人立ち上がった。



「桜、早いな。用事か?」

「あ…うん。ちょっと出かけるから」



目ざとく声を掛けてきた政宗に曖昧に頷けば、秀吉も顔を向けてくる。



「買い物か?荷物があるなら一緒に行くぞ」

「大丈夫、えと…人と会うだけ」

「…人?」



桜の言葉に次は光秀が訝しそうに問い返し。



「うん…市で仲良くなった人」

「それ、男?」

「そ、そうだけど…」



家康の言葉に答えた途端、武将達の顔が険しくなる。話せば話す度に墓穴を掘り進めていく事に焦り、桜は冷や汗が止まらない。



「変な奴じゃないだろうな」

「大会前で人が増えてるから、注意しなよ」

「こうなったら俺も一緒に…」



誰から何を言われているのか分からない程、一斉に桜を心配する声が溢れ出す。このままでは、本当について来かねない。

助けを求めるように、桜は上座の信長を見た。その視線に苦笑をこぼして、信長は皆を制するように口を開く。



「陽が落ちる前に城へ戻れ、桜」

「はいっ」

「桜様、お気を付けて」



三成がにっこりと微笑んでくれる。信長が行け、と手を振った。桜はぺこりと頭を下げ、秀吉や政宗が腰を上げる前に慌てて広間を後にする。


それから桜は、手早く準備を済ませて城を出た。一応ついてくる影がいないか確かめてみるけれど、信長のおかげかそれもないようだ。

市まで出て、昨日信玄と会った場所へ向かう。そこには既に、いつもの柔らかい笑みを浮かべた信玄が、ゆったりと待っていた。



「やあ、姫。来てくれて嬉しいよ」

「すみません、もしかしてお待たせしてしまいましたか」

「そんなことは気にしなくていい。女を待たせるなんてこと、俺には出来ないからな」



笑みが深くなり、色気が増す。信玄の笑顔は、桜の心臓に悪い。

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