第22章 温泉旅行へ*家康エンド*
「貴様、心を決めたか」
「えっ」
面白いものを見るような目で、信長が桜を見る。どきりとして見返せば、堪えきれないというように信長が笑いだした。
「それだけ顔に出ていれば、赤子でも気付く」
「あ、はは…」
恥ずかしさに照れ笑いをするしかない桜の膝に、唐突に何か乗ってきた。驚いて見下ろすと、真っ赤な顔で眠る政宗の頭だ。
「へ?!」
何が起きたのか分からず、目を白黒させる桜のもとへ光秀が寄ってくる。
「湯呑みにたまたま酒が入っていたようだ。まったく、誰が入れたのだろうな」
「いや、明らかに光秀さんでしょ」
呆れた口調で家康がぼそり。
「まさか桜を枕にするとは思わなかったな…眉でも剃り落としておくか」
「や、止めた方が良いと思いますけど…」
家康の言葉など聞こえていないのか、本当に眉を剃り出しそうな光秀を止めながら、桜は膝の政宗を見下ろす。
気持ち良さそうに寝てる…。
これでは、身動きがとれない。
「桜様、大丈夫ですか?」
「うん、平気だよ」
「桜、そんなもん膝に乗せて…重いだろ」
心配してくれる三成に答えていると、秀吉も眉間に皺を寄せて政宗を見る。
「少し重いけど…でもせっかく寝てるから」
「あんたって、ほんとにお人好しだね。外にでも放り投げとけば?」
そう言いながら、家康が御馳走様と手を合わせる。三成が、にこにこと家康へ笑顔を向けた。
「家康様、出立までお時間がありますので、宜しければ…」
「断る」
ぶすっとした顔で家康が立ち上がる。そのまま広間を後にしようとする姿に、桜も慌てて腰を上げたものだから、膝に乗っていた政宗の頭が、ごちんと床へ落ちる。
「いでっ」
「ごめんっ」