第21章 温泉旅行へ*三成エンド*
自分の腕の中にいる桜に、触れたい。その欲が唐突に三成の中で湧いてくる。恋という感情は本当に欲深いものらしい。
三成は、初めて感じる気持ちの波に、いちいち感動していた。桜を想って、自分の手に入れて満足したと思ったのに、今度は触れたくて触れたくてたまらなくなる。笑った顔も、照れた顔ももっと見ていたくなる。
「桜様に触れても、構いませんか」
「えっ、う、うん」
驚きに目を見開きながら、真っ赤な顔で頷く桜の様子を不思議に思いながら、三成は手を伸ばす。
桜の頬や目元、唇。どこもかしこも柔らかくて、手で触れるだけでは物足りなくなってくる。こういう時、恋仲の男女は何をするのだろう。
「桜様、この後はどうしたらいいんでしょう」
「こ、この後…!?」
「はい。触れるだけでは物足りなくて…」
天使のような笑顔で、三成は桜の顔を見てくる。これで何の他意もないのだから、厄介だ。
「く、口づけ…とか、かな…」
「口づけ、ですか」
根負けした桜が呟いた、小さな声に、三成はなるほどと頷いた。触れていた手を桜の下唇にそっと添わせる。
「しても、宜しいですか」
「っ……は、い…」
もはや目元まで真紅に染まった桜の顔。その唇に三成はそっと口づける。唇が触れ合ったとたん、三成の体に電気が走ったような感覚が襲う。
「もう一度…」
「ん…っ」
確かめるように、今度はゆっくりと。味わうように桜の唇に触れる。
一瞬離した唇を、再び重ねる。桜にもう何も言わずに、噛みつくように唇を挟んで。漏れ出る吐息と、しがみ付いてくる桜の手。
今桜の全てが自分の中にある事が嬉しくて、触れ合う唇が愛おしくて。感じる温もりに夢中になっていると、桜が三成の胸を叩く。
「はぁっ…」
少し荒くなった呼吸を整えながら唇を離すと、桜が肩で息をしている。苦しかったのかと心の中で反省していると、とろんとした目が三成を見て、どくんと身体が脈打った。