第21章 温泉旅行へ*三成エンド*
三成は、桜を腕の中へ抱きしめた。可愛くて可愛くて、触れても、口づけても、何をしても物足りない。桜の全てを物にしても、満足しないのではないかと思うほど、三成の心は桜を求める。
「桜様、大好きです。何度言っても、足りないくらいに」
「…ありがとう。私も…好き。大好き」
にこり、と笑いあって、三成の心の内が、ぽっと灯りが灯ったように暖かく満たされた。
不思議だ。
触れても触れても物足りないはずだったのに、こうして二人で笑い合うだけで、満足してしまった。
そんな三成の視界に、桜の首の傷が写って、はっとする。
「そろそろ、宿に戻りましょう。早く手当てをしなくては…」
「あ、そうだね」
立ち上がった二人の前に、ゆらりと動く影ひとつ。驚く桜達の前に現れたのは、光秀だった。
「終わったか?」
「光秀さんっ」
ニヤニヤと、意地悪な笑みを浮かべて近づいてくる。明らかに見ていただろう登場に、桜の顔がボッと沸騰した。
「い、いつからそこに」
「さあ…忘れた」
笑ってはぐらかす光秀に、桜は赤い顔のまま逃げるように歩き出す。
「お待ちください、桜様!」
一人で行かせる訳に行かないと、声をあげる三成に、光秀が笑いかける。
「お前も行け。俺が後始末をしておく」
「すみません…光秀様」
「三成」
歩を進めようとした三成が、立ち止まり振り替える。
「決して手を、離すなよ」
「…はい」
普段の三成には通じないはずの、遠回しな言い方。けれど三成は、光秀の顔をしっかりと見て、真剣な顔で頷いた。
ぺこりと会釈した後、早足で桜を追い掛けていく。光秀は、優しく目を細めて、その後ろ姿を見つめていた。
三成エンド 終