第21章 温泉旅行へ*三成エンド*
「桜様。このまま…聞いて頂けますか」
「…う、ん」
自分の腕の中にいる桜は、なんて軽いのだろう。それに、小さくて、柔らかくて。
「今からもう一度あなたに…想いを伝えます」
「もう一度…」
三成の言葉を、桜が噛み締めるように復唱する。前に言った、隣にいるのが私でなくとも構わない、と。しかし。
「桜様への想いに気付いてから、他に何も考えられないほど、頭の中が桜様ばかりで…困っています」
ゆっくりと頭を上げて、自分の顔を見る桜に笑って、三成はその髪を撫でる。
「こんな経験は…初めてなんです。これが恋…というものだとするならば…終わらなければいいと、願わずにはいられません」
そして傲慢にも、桜の隣にいるのが自分であればいいと思う。恋、というものは、心の中で勝手に大きくなっていくものらしい。
自覚してしまったが最後、桜への熱い想いは留まらず、加速して三成の心を侵食していった。笑顔を思い出すだけで、心は苦しく暴れ出すのに、それをもっとと求める自分がいる。
「桜様、私のお側にずっと…いて下さいませんか。私がこうして…あなたを腕の中に抱きしめられる距離にいて、下さい」
願わくば、これを最初で最後の恋に。
「本当に…私で、いいの?」
「桜様が、いいんです」
「じゃあ…」
お願いします、と照れた顔で笑う桜。その姿は、目がくらむほど美しく見えた。
桜の返事を聞いた途端、自分の心臓がうるさく音を立て始めるのに驚く。顔も体も熱くなって、息をするのもままならない。
しかし、桜を離すのはどうしても嫌だ。ぎゅっと身体を抱くと、心臓はさらに大きな音を鳴らす。
「すみません…桜様」
「ん…?」
「私は桜様の事が、好きすぎて好きすぎて…堪らないみたいです」
苦笑しながらそう言うと、桜の耳が赤くなる。三成の腰に桜の手がまわり、きゅっと着物を掴むその仕草が可愛い。