第21章 温泉旅行へ*三成エンド*
小屋の外で様子を伺っていた桜の元へ、三成が戻ってくる。
「桜様…良かった」
「三成君、本当にありが…ッ」
礼を言う桜の体を、三成が力の限り抱きしめる。その仕草は、普段の物腰からは想像できないほど力強くて、桜は息を呑んで静止した。
「はー…」
「み、三成君っ?!」
身体中から空気を追い出すような、安堵のため息。それと共に、三成の体から力が抜ける。抱きしめられたままの桜は、到底三成の体を支えきれず、一緒にずるずると座り込んでしまった。
「すみません…安心したら、力が抜けてしまって」
苦笑する三成の顔に、桜もつられて笑う。
「桜様…生きて、無事で、いらっしゃいますよね」
「うん…無事。三成君の、おかげ」
「よく、見せて下さい」
三成に笑いかける桜を、座り込む膝の上に抱き上げて。桜の体を確かめるように触れながら、その顔をまじまじと見つめる。
「み、三成君…」
近すぎるその距離感に、桜が顔を真っ赤にしている。桜の様子に気付かない三成の目が、ある一点で止まった。手が伸びてきて、桜の首の刀傷にそっと触れる。
「…何故、あのような事を」
「え…?」
苦しげに、悲しげに歪む三成の顔。桜は自分が何をしたか思い出す。
「私を盾にして、三成君達を殺しに行くつもりみたいだったから…そんな事絶対させたくなくて。咄嗟に抵抗して…」
「桜様」
眉をひそめた三成は、口元をぎゅっと結び、笑顔など忘れてしまったような顔で桜を見る。
…怒っている。
「そんなに我々は、頼りないのですか」
「ち、違うよ。ただ足手まといになりたくなくてっ…」
「殺されていたかもしれないんですよ」
発言を遮られ、桜は三成の言葉に黙るしかない。小さな声でごめんなさいと呟く桜は、三成の膝の上で項垂れた。