第19章 温泉旅行へ*光秀エンド*
「女中の方々から面白いお話もお聞きできて、有意義でした」
楽しそうに話す三成の言葉。三成の笑顔と人当たりの良さがまた発揮されたということだろう。輝きを増す笑顔の横で、家康の眉間にどんどん皺が寄っていく。
「また玄関で時を過ごすのも、悪くないですね」
「頼むから、やめろ。移動する度にお前が視界に入ってくるのは耐えられない」
「お忙しい家康様をお見送り出来るとは、大変光栄です」
「…明日本当にいたら、叩っ斬ってやる」
家康が大変危険な結論に達した所で、それまで黙っていた信長が、光秀の方を見た。姿勢を正して、言葉を待つ。
「…光秀」
「は」
信長が、あぐらの上に肘をつき、光秀を見ている。挑発的な笑みを浮かべてはいるものの、目は笑っていない。
特有の威圧的な空気に、三成達も黙る。
「何か言うことはあるか」
「いいえ…申し訳ありません」
神妙に頭を下げる光秀に、無言の重圧が降り注ぐ。まあいい、と呟かれた主君の一言にまた、頭を上げた。
信長の態度が軟化したことで、張りつめていた広間の空気も緩む。用は終わったとばかりに腰を上げ始めた仲間達を見やり、光秀のいたずら心が疼き出す。
都合の悪い情報は口に出さず、秀吉が桜を風呂へ連れていったことを口にだしたときの、皆の顔。
こいつらといると、飽きることがないな。
そのあと秀吉が大変だったのは、また別の話。