第18章 温泉旅行へ*政宗エンド*
桜の両手を掴んだまま、政宗はただその顔を見つめていた。
今こいつ、なんて言った?
聞き間違いじゃない。確かに政宗の聞きたかった言葉を桜は口にした。すぐには信じられずに、さては崖を下りたいがための適当な言葉かとも思ってしまう。
けれど、潤んだ瞳をたたえたその顔が、それを否定していて。答えを促したのは政宗自身だけれど、まさかこんなにあっさりと聞けるとは。
政宗の手を、桜がゆっくりと握り返した。込められた力とその手のぬくもりが、確かに政宗のものであることを唐突に主張し始める。
「お前がやっぱりやだって言っても、もう遅いからな」
「…うん」
こくりと頷く桜が。政宗が心の底から惚れて、愛しくてたまらない存在が。今確かに政宗の腕の中にいる。
溢れる嬉しさに頬が緩むのを抑えられない。いつもの余裕のある笑顔を保つのに、必死だ。
「…じゃあもう、我慢しなくていいってことか」
「へ…」
握りあっていた桜の手を自分の胸元へと下ろさせて、腰を引き寄せさらに密着するように抱く。桜が驚いたように身を強張らせた。
昨日の夜も、その前も。桜に触れたくて触れたくて、たまらなかった。生き地獄のような日々を過ごしてきた埋め合わせは、たっぷりとさせてもらわなくては。