第18章 温泉旅行へ*政宗エンド*
「おい、何してる」
つい声を上げていた。一度戻って誰かに知らせてからの方が良かったかと、一瞬後悔がよぎる。
ばっと振り向き、政宗の姿を認めた吉次は、何でもない顔をして笑ってみせた。
「おや、政宗様。どうかなさいましたか?夕餉なら今しがた…」
「聞いているのは俺だ…今、何してた」
無意識に少し低くなる声。目を細めて詰問すれば、戸惑った顔が見返してくる。
まだごまかせると思ってるらしいな。
「お茶をお淹れしておりました」
「へえ…それだけ、特別みたいだな」
わざとらしく湯呑を見て言えば、明らかな動揺が見て取れた。背中に盆をかばうようにして立っていた吉次は、政宗から少し後ずさる。
「誰のものだ?」
信長様…だとしたら、少しおかしい。茶を飲んで倒れれば、必ず調べる。もし毒が入っていれば、家康ならすぐに分かるはずだ。宿の者たちは、謀反人として斬られても文句は言えない。余程の馬鹿でない限り、全員に飲ませようとするはずだ。
それでは、もしあれが毒でないとしたら。
「桜…か?」
桜の名前を出した途端、吉次の顔が変わった。邪悪と言ってもいいような笑みが浮かび、瞳は危険な色にきらめいている。