第2章 名前を呼んで(篠宮END)
「どうして…?」
恭の方を見ることが出来ずに問えば、耳元で恭がくすりと笑う。
「先輩、顔も耳も真っ赤」
「だ、だって…」
可愛い後輩、としか思っていなかったのに。
急にこんなことするから。
先が続かずに、は口ごもる。
「ね、こっち向いて」
「やだ…」
少し体を離して、の顔をのぞき込むようにしてきた恭に見られまいと、はさらに反対の方へ顔を向ける。
「離して…」
「…こっち向いてくれたら」
「さっきの答えは…?」
「こっち、向いてくれたらね」
恭は、こんなに意地悪だったっけ。
は、既に破裂しそうなほどの音を立てている心臓の鼓動を感じながら、顔だけをゆっくりと恭の方へ向けた。
恭の顔が、鼻が触れ合うほど近くにあって、驚いて体を離そうと試みるけれど、恭の腕がそれを許してくれない。
「先輩…」
「し… っん…!」
恭を呼ぼうとするの唇が、恭の唇で塞がれる。
身体を離そうともがくけれど、恭の掌がの頭を抑えて。
もがいた拍子に離れた唇は、再度より深く口づけられた。
「っ…んん…」
名残を惜しむように、ゆっくりと恭の唇が離れていく。
「な…んで…」
「先輩が…可愛くて。ずっと、こうしたかった…」