第4章 教えてあげる<大久保利通>
「いただきます」
「どうぞ」
焼き魚に箸を伸ばす大久保を、未だ火照る顔で見つめる。色々と聞きたいことはあれど、まずは。
「大久保さん、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」
と出会うまでは、誕生日など大して嬉しいものではなかった。それが今、愛しい人からの言葉一つで、大久保の心にぽっと火が灯るような温かな感情が広がっていく。
「あの、大久保さん…」
「食べながら、話そう」
聞きたいことがたくさんあるって顔してる。
大久保の言葉に頷き、箸を取ると共に食事を進めつつ、大久保はのために口を開く。
「その服を用意するのに必要な材料がすぐに揃わなくて、あちこち探してた。夢中になり過ぎて、幸男に怒られるくらい」
「大久保さんらしいですね」
クスクスと笑うの笑顔に目を細めながら、大久保はその時の事を思い出す。
をないがしろにしていいと思ったことは決して無いつもりだったのに、洋装を間に合わせたい一心で集中しすぎて、日にちの感覚すら危うくなっていた。
ユキと打ち合わせしていた時にが訪ねてきた時には、入れる訳にいかずに追い返した。しばらく会っていないと寂しがるの様子を聞いて初めて、大久保は我に返った。
すぐに会いに行ったの嬉しそうな顔に、大久保は自分の失態を自覚したのだ。