第4章 教えてあげる<大久保利通>
ユキと共に部屋へと引っ込んだを待ちながら、大久保は良い匂いを辿って台所を覗いた。
出来立てである証拠に湧き上がる湯気の下には、二人で食べるには多すぎるほどの料理が並べられている。
美味しそう。
朝ご飯を食べる時間も惜しく感じて駆け付けた体が、今になって空腹を訴えている。
欲しいものなど無いと言ったから、は贈り物の代わりに大久保をもてなそうと思ったのだろう。並べられた料理の数々が、全て自分のために作られているのだと思うと、自然と頬が緩む。
早く。
台所を出て席に腰かけながら、ちらりと二階へ上がる階段を見る。空腹を満たしたいという欲求はもちろんだけれど、それ以上に大久保の心をそわそわと落ち着かない気持ちにさせるのは。
「お待たせー!」
うるさいほどの明るい声を響かせて、ユキが階段を降りて来た。その後ろから、少し気おくれしたようにゆっくりと降りて来たの姿に、大久保は言葉も忘れて見惚れる。
「ど、どうでしょうか…」
「…よく、似合う」
思ったことをそのまま言葉にすれば、照れたようにが頬を染める。
「良かったわ、間に合って!大久保さんたら、急に言い出すんですもの」
「あの、これって…?」
の視線が、大久保の着る官軍服へと向く。