第4章 教えてあげる<大久保利通>
大久保の誕生日、当日。
女将の計らいで、この日は四季が休みだ。は早朝から大久保に食べてもらおうと、台所を借りて料理に精を出していた。
「何もいらない。その代わり、俺の願いを叶えてくれる?」
誕生日に欲しいものを尋ねた時、大久保は微笑みながらそう言った。それはもちろんと頷いたものの、何も用意しないというのも落ち着かなくて。
ガラガラ、と四季の入口が開く音が響いて、は慌てて台所から顔を出した。
「おはよう、!」
「良い匂い…」
「ユキちゃん…大久保さん?」
ユキが大久保と一緒に来た事にも驚いたけれど、それ以上にの目を丸くさせたのは。
「なんで洋装なんですか?」
「まだ秘密」
会合などがある時、大久保たちは交渉相手によっては着物ではなく洋装で出かける事がある。その時に着ている官軍服に身を包み、大久保は目を細めて笑う。
「ほらほら、。いいからこっちに来て!」
「え、何…?」
訳が分からないままのを、ユキが部屋まで引っ張っていく。
「これに着替えてね」
「うん、分かった…」
喜々として解いた風呂敷の中身を差し出してくるユキに、は諦めて大人しく従う事にする。