第4章 教えてあげる<大久保利通>
その日、既に閉店した四季の店内を片づけていたは、戸を叩く音に顔を上げた。
「、開けて」
「っ…」
待ち焦がれていた声に、飛びつくように戸を開ける。久しぶりに会えた大久保の姿が嬉しくて、つい顔が綻んでしまう。
「嬉しそう」
「久しぶりだったので…」
「うん…ごめん」
大久保も心なしか嬉しそうにを見下ろしていたが、ふと真面目な顔になって、ふわりとを抱きしめた。
「会いたかった」
「私もです」
久しぶりの温もり。声。匂い。
数日感じていた不安が嘘のように消え去っていく。が大久保の背中に手を回せば、大久保の腕にも答えるように力がこもる。
「誕生日、お祝いしたいです」
「俺もと一緒にいたい。そのために今忙しいけど、明後日は必ず二人でいよう」
「はい」
顔を見に来る時間だけ取れたから、と言って、大久保は名残惜しそうに腕を緩めた。出来れば引き止めたいけれど、誕生日を共に過ごすために頑張ってくれているのなら。
「無理は、しないでくださいね」
「との時間のためなら、無理しても惜しくない」
大久保の言葉が嬉しくて、熱が灯る顔を俯かせていると。
「…忘れてた」
「え…っん」
の頬に手を添えて、大久保は優しく口づけを落とした。
「行ってくる」
「行って…らっしゃい」
熱の残る唇に触れながら、愛しい人を見送った。