第3章 名前を呼んで(沖田END)
「すみません、説明もなしにこんな所へ来て。市中で今一番怪しいのが、ここなんです」
「そうなんですか」
優しくの腕を引いて、部屋に上がらせながら話す沖田に、相槌を打つ。
「ここなら、誰も他の部屋のことなんて気にしないでしょう?ずっと問題になってたんですが…男だけで来るわけにも、行かなくて」
「確かに、そうですね…」
手近な座布団にを座らせて、自分も適当な場所に腰を下ろしながら、沖田は話を続ける。
「さんは、何も気にせずにゆっくりしていて下さいね」
「はい。分かりました」
は、もう何度目か分からないため息を、こっそりついた。
お茶を淹れてみたり、物珍しさから部屋を見回してみたりしたけれど、そんなことに時間はかからなくて、あっという間にすることが無くなってしまった。
沖田は、部屋の壁際に体を預け、様子を伺うようにじっとしていて、邪魔になりそうで話しかけるのも気が引ける。
ずっと座っているのも疲れてきて、は立ち上がった。
布団の敷いてある、奥の部屋を覗いてみよう。
「わ…」
少し暗くしてある部屋には布団が一組だけしいてあって、枕だけが二人分置いてある。
それがとても生々しく感じて、顔に熱が集まってしまう。
「退屈ですか」
「っ…あ…だ、大丈夫です」
いつのまにか傍まで来ていた沖田に驚いて、は慌てて取り繕う。
「ふふ…さん、顔が赤いですよ?…想像、しちゃいました?」