第3章 名前を呼んで(沖田END)
夕暮れ時のにぎわう町中を、二人は連れ立って歩く。
沖田はの手を引きながら、ごく自然に店を冷やかして回り、の事も時折からかう。
繋がれた手から伝わってくる沖田の体温。
これはただの仕事の手伝いだと言い聞かせるけれど、どうしてもは、ドキドキしてくるのを抑えられない。
どうせ自分には、不穏な動きをしている人物など分からないし。
そう思って、は沖田との時を素直に楽しんだ。
日が暮れ、開いている店もまばらになってきた頃。ずっと歩き続けていたせいか、少し足が痛い。
無意識にふっとため息をついたの顔を、沖田がのぞき込む。
「疲れちゃいました?」
「あ…すみません。大丈夫です」
「もう少しだけ、頑張れますか?あと一軒だけなので」
「はい」
沖田は、通りを奥へ奥へと進み、一軒の建物へと入っていく。
何も考えずについて入れば、そこは普通の店とは明らかに違っていて、は部屋の入口で思わず足を止めてしまった。
そこは個室になっていて、二間続き。手前の部屋はごく普通の和室だが、奥の部屋には、布団が敷いてあって、枕が二つ。
つまり、出会い茶屋。現代でいう…ラブホテル。
「どうしました?さん」
先に入っていた沖田が、入口から一向に入ってこないを気にして戻ってきた。
「あの…ここって…」
の言わんとしていることを察して、少し申し訳なさそうな笑顔で、沖田が頷いた。