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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第8章 華やかな垣根の向こう


「・・・なぁコレ、この椅子よ?えれェ高価そうな布張ってあっけど、ケツ載せていいもんなのか?うん?」

「ああ、高価いでしょうね。これはソンケット布ですよ。・・・と、言ってもわかりゃしないでしょうがね。古くは王室の衣装にのみ用いられたくらいのものですからね。織りの精巧さから見てもあなた如きが易々と腰掛けられるようなものじゃないでしょうよ」

「・・・ホントムカつくな。何だ、じゃオメエ如きも腰掛けちゃ駄目なんだぞ、うん?」

「・・・だからと言う訳でもありませんが、私はずっと立っているでしょう。目の前にいて何を見ているんです、あなたは・・・」

「うん?そういや立ってんな?どうした?座ると死ぬのか?難儀だな、うん?」

「・・・ちょっと黙っててくれませんかね?私も黙りますから」

椅子の傍らに腕組みして立った鬼鮫が、僅かに眉根を寄せて瞠目する。

「・・・何かなかなか誰も来ねえな。忘れられちゃいねえだろうな」

小体だが何から何まで凝った造りの部屋の中を興味津々で見回しながら、デイダラが表情を曇らせた。

「こんなゴテゴテして息苦しい部屋にいつまでいなきゃなんねえんだよ?うん?オイラこういうのはあんまり好かねえんだよな、うん」

小さな竜と夏椿がみっちりと彫り込まれた窓枠に顔をしかめ、勢いよく立ち上がる。

「このヘンテコな匂いがするお茶も好かねえ。何だ、こりゃ、呑めんのか?」

四脚とも鼻を上げた象の彫刻があしらわれた黒壇の卓に載った派手な五彩の湯呑みを睨み付け、鬼鮫同様腕を組む。

「・・・それは茉莉花茶ですよ。中に茉莉花の花が開いているでしょう?」

「・・・花ってこのエイリアンのホルマリン漬けみてぇなヤツの事かよ?うん?」

「・・・以前から疑ってはいましたがね。あなた自称とは言え本当に芸術家なんですか?その感性でこの先も芸術家を名乗り続けるつもりなら、相当問題があると思いますよ?」

鬼鮫はハッキリと眉をひそめてデイダラと部屋の内装を見比べた。

「・・・確かに私もこういう派手で重厚な装飾は好きじゃありませんがね。華美過ぎる。だからと言って趣味が悪い訳ではない。紙一重なところに高価な物への慣れが透けて見えて、あざとい。感じ悪いですねえ。勘に障る」

「要するにオメエみてェなヤツが飾った部屋なんだな?うん?」
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