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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第19章 この際牡蠣殻は関係ないらしい。



細い水の縄が幾重にも飛沫を立てて捩れながら交錯して波平を網の如く取り囲む。
糸鋸のようにギザギザと泡立つ水の網がギュッと輪を縮めた瞬間、波平が半眼をすがめて腕を拡げた。

バヅッと網が滴の群れになって辺りを煙らせた。一度失せた波平は、鬼鮫の後ろにビュッと背中合わせで立ち現れ、低く告げた。

「我らの本領は逃げ失せる事にある」

振り向きざまに背から放った鮫肌を振り抜いた鬼鮫は、手応えのないのに片口を上げて歯を食いしばり、踏み締めた足元をすかさず見下ろした。

空、牡蠣殻は居ない。

小さな木枯らしが嘲笑う様に渦を巻いて消える。

「させませんよ」

鬼鮫はむしろ愉快そうに呟いて笑った。

「私の本領は逃げるものを捕らえる事。フ。逃がしません」
















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