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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第15章 だからこれは恋じゃない。


「・・・軽くイラッと来る事言うじゃん?」

「あー・・・、イラッとしました?すいません。どうも失言が多くていけません・・・いや、悪気は全くないんですがねえ・・・物の言い方が悪くて。気にしちゃいるんですがなかなか治らない。おかしいな」

「知らねえよ・・・てか治す気あんだ?へえ」

「何です、へえって?」

「いや、意外だなって」

「・・・何です、意外って?」

「ん?まあ、治す気あんのは、ないよりゃいいんじゃん?治るかどうかは別にしてもよ?ハハ」

「・・・成る程、軽くイラッと来るってのはこういう感じですか。わかりましたよ。すいませんね、イラッとさせて。チッ」

チッてなんだ、チッて。

変な女。

言っちゃなんだが全然好みじゃない。木の葉の日向んとこのコみたいな、優しげで控え目なタイプが好みだ、俺は。いや、もっと言ったら化けの汐田の方がまだしも女に見える。
多分絶対気も合わない。変だし地味だしメンドくさそうだし、ちょっと奈良に似てるし・・・おい、最悪じゃん?

でも気になる。
あちこちで欲しがられてるのに、その実本当は誰にも気にされてないような、会う度傷付いてボロボロなのにヘラヘラしている仕様もないこの女に、気持ちのどこかが引っ張られる。仕様がねえじゃん。俺は人がいいから。

コイツを見てると満身創痍の部下を連想する。傷付いても何の疑いもなく任務を遂行しようとして挙げ句自爆するような、バカで目放しならない厄介なメンバー。

面倒見いいんじゃん?俺。

だからこれは恋じゃない。絶対に。

コイツは磯の影のとこへ戻るべきじゃねえし、暁のオッサンともいねえ方がいい。もっと自分ってモンを大事にする事を考えられるようになんなきゃ駄目だ。

誰かが、その誰かってのが何処の誰でも、ソイツがソイツらしくなく生きなきゃなんねえなんてのが、俺は大嫌いだ。まして本人がそれに気付いてねえなんてこんな理不尽があるかよ?
辛くても楽しくても寂しくても満ち足りてても、ソイツがソイツじゃなきゃ何一つ意味がねえじゃん。

だから俺はコイツを砂に連れてく。

お節介でもなきゃ警備隊長なんかやってらんねんだよ。

「ひとりで草まで来たんですか。砂も人手不足が深刻なんですねえ・・・」

波平は今いない。いつ戻るかわからない。

ー阿杏也叔母と会ってしまったから。
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