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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第15章 だからこれは恋じゃない。


慣れた。人が不意に降って来るのに。

こうして現れる連中もいるのだ。仕方ない。意外に順応力高えじゃん、俺。

「わははははッ!」

膝を払ってカンクロウは大笑いした。

「つくづく人の上に降って来んのが好きだな、アンタら。寂しいのか?・・・フッ。いっそ笑えるわ」

隈取りの入った口元を払い、今さっき自分の背中から慌ててどけた相手を見やる。

「・・・あれ?すいません。痛かったですか」

自分でも驚いているのか、言葉ほど申し訳なさそうでも気遣わしげでもなく、両の手を脇に垂らしたままの牡蠣殻が呆然と言った。

「・・・それであの、・・・つかぬ事をお伺いしますが。ー砂?ここ?」

カンクロウは包帯と膏薬、欠けた歯に笑いを引っ込めてしげしげと牡蠣殻を見詰めた。目の下に残る隈が傷だらけの薄っぺらい女を更に寒々しく見せる。
何故会う度ボロボロなのだ、この女は。

「草だよ、ここは」

薄く小さな手を眺めながら答える。また乾いて汚れているのだろうか。何なんだ。何でこう会う度人を心配させるようなザマで現れるんだ。

「ですよね。ハハ、びっくりしましたよ」

空笑いして牡蠣殻は不思議そうにカンクロウを見返した。

「・・・で、何だってここにいるんですか?観光?」

「そんな暇に見えるかよ?」

「暇じゃないならますます何でこんなところにいるんです?外商にみえたんですか。なら今は間が悪い。帰った方がいいですよ。送ります?砂まで?」

「送る?アンタが?砂まで?」

カンクロウの目が意味ありげに細くなる。

「いい考えじゃん。じゃ、頼もうか。失せんの?」

「まあそうなりますね。他に仕様がないので」

カンクロウが草にいる事にひたすら驚いている牡蠣殻は、目を瞬かせながら頷いた。

「ただ私も少し立て込んでいまして、急ぎになりますがよろしいですか」

「いいじゃん。ごちゃごちゃする前に行っちまった方がこっちとしても都合がいい。・・・因みに急ぐとどうなんの?」

「精度が落ちて今のような事が起こる可能性が出ます。それでもよろしければ」

「我愛羅かテマリなんかの上にのっかるかもしんねえっての?いいねえ。たまにゃアイツらもそういうメに合ってみりゃいいじゃん。何でかいっつも俺ばっか変なメに合ってっからよ」

「はあ。そういう星の下なんでしょうね、きっと」

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