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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第14章 引き際の線引き


「宝塚の方でも貴方に興味なんか全くないと思いますよ。ええ、確実に」

「あなたにも興味がないのと同様にね」

「別に構いませんよ。そんな滅相もない」

「なら何だって歌いだそうとするんです。あなた笑いさえとれれば何でもいいんですか?何でそんな切羽詰まったお笑い芸人みたいな生き方をしてるんです?何かの強迫観念ですか?いい加減にしないと口を縫い付けますよ?」

「お、流行りのボディーステッチですか」

「ミイラの最終処理ですよ」

「・・・・ミイラですか。・・・・そりゃまた・・・・随分と持ちが良さそうな話ですねえ・・・・で、何の因果で私はミイラになんなきゃならないんです?取り立てていい事も悪い事もしてませんが、何の褒美や罰なんです?」

「褒美や罰じゃなくてもミイラになる事は出来ますよ。試してみますか?その際は欠けた歯をキチンとつけなおしましょう。今よりマシな顔になる」

「頭が削られてたり腹に穴が空いてちゃ歯どころの話じゃないですよ。鮫肌を収めて下さい」

「これで力任せにあなたの頭を横殴りしたらさぞスッとするだろうと思うと、理性の働く間もありませんねえ」

「こらまた全て灰燼に帰すようなこざっぱりした事仰りますね。よくそれで逃げるなとか言うよな、このエラ呼吸」

「ーは?」

「・・・・と、思わないでもないような気がするのが気のせいなのかと思わないでもない・・・・わかります?」

「わかろうとも思いませんね」

「そうでしょうとも。当の私からしてよく解らない」

「成る程。流石にあなたとの付き合いかたにも少し慣れて来ましたよ。珍しやかな獣も慣れてしまえば只の獣、振り回される事もありません」

「井の中に鮫が入るとも思いませんが、思うより世も井も広い。稀少種の獣に足元を掬われぬように用心して下さいよ。私は泣くのは嫌いです」

「・・・何の話です?」

「・・・?・・・・何でしょう?」
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