第11章 優しさ
「その前に腕出して」
「え?」
バレた…?
「早くしてくれない?」
やっぱり月島くん鋭い。
手にコールドスプレー持ってるし。
「…」
どう誤魔化そうかと考えていると月島くんに早くしろと睨まれたので、大人しく腕を差し出した。
袖を捲り、赤くなった腕を曝け出す。
「ぎゃ、赤い!」
「こーんな細っこい腕で俺のスパイクをねぇ」
「おい木兎、相手が女だと思って手加減したんじゃねぇのか?」
「んな訳ねーだろ!」
「保冷剤とか氷とか冷やすもの持って来るよ」
赤葦さんが走る。
シューッと冷たい空気が患部を冷やす。
「…冷たい」
「当然でしょ。
冷やしてるんだから」
「そうだね」
「保冷剤持って来たけど」
「ありがとうございます」
月島くんが素直にお礼言うなんて珍しいな。
「ッ…」
ピト、と保冷剤が触れて身体が強張る。