第55章 ハプニング
「ちょ、当たってるんだけど」
「あ、やだ…離れちゃや…」
「〜!
もう…ずる過ぎでしょ」
波瑠とは違う意味で顔を赤く染めた月島が、呟く。
涙に濡れる瞳。
赤く染まった頬。
熱い身体。
熱い吐息。
おまけに熱のせいもあり、完全に甘えている。
そんな彼女にドキドキしない男なんて、男じゃないでしょ。
「えへへ、けいだ〜」
そんな彼女もまた、胸の高鳴りが抑えられない。
こんな密着してる…!
肩がぶつかる程度とか、そんなレベルじゃなくて抱きしめられてる。
それも物凄く情熱的に。
顔に熱が集まり、心臓が早鐘を打つのが分かる。
沈黙が流れる。
この状況について言うか、言わまいか。
どうしようか。
そんなことばかりが頭をよぎり、頭を上手く使えていない。
普段からは考えられないミスに、2人がどれだけテンパっているかが分かるだろう。