第55章 ハプニング
左右横開きの扉に手をかけ、横に動かす。
ギィィ…と金属の擦れる音がして、扉が開く。
中に入ると、ムワッと生暖かい空気に包まれる。
ジトリ…と汗が浮かんで来た。
「えーっと…」
目的の物を探すが、倉庫内は暗くよく見えない。
「困ったね…これじゃろくに探し物も出来ないよ」
思わず溜め息が零れる。
「ねぇ、何探してる訳?」
「えっとね…」
刹那、ビュウッと強烈な風が吹いた。
極力雨が入って来ないようにと、少しだけ開けられていた倉庫の扉が、嫌な音を立てて閉まる。
「え…?」
光が全くなくなった倉庫内は、より一層不気味さを醸し出している。
「ッッ…」
「波瑠?」
「…」
「大丈夫?」
月島の声にも反応を示さない。
「波瑠?」
辺りを見回してみるが、己の身体すらも把握出来ない程の暗がり。
当然人の姿を把握することも出来ない。