第51章 アップルパイ
「なんだ、繋心。
高校生に説教されてんのか」
「猫又先生…」
「お前もまだまだだな。
バレーも、人生も、焦った方が負けなんだ」
焦れば必ずどこかに綻びが生じる。
確かに焦って良いことは1つもない。
流石は年の功、と言うべきか。
言葉に重みがある。
私が言うのとは説得力が段違いだ。
「…柏木、仕事は済みそうか?」
仕事…分析か。
「もう終わってます」
「流石に仕事が早いな」
「色々思うことはありますけどね」
「なんだ?言ってみろ」
「うちと相性は悪いですね」
「あぁ、青城か」
「はい。
それと山口くん。
試合慣れさせておかないと、ピンチサーバーとしていざという時に機能しませんよ」
「慣れって言ったってなぁ。
前回のインターハイの時は苦し紛れの解決策だった訳で」
「昨日他校のチームと3対3をやったんですけど、緊張でガチガチでしたよ。
環境が環境だったとはいえ、本来の半分の力も出せてなかったと思います。
まぁ、前回のインターハイが印象強く残っていて怖がるのも無理はないと思いますけど」
サーブやレシーブでもミスが目立った。
打つスパイクも悉くブロック、もしくはアウトだ。