第51章 アップルパイ
「すみませーん」
「おう、柏木か。どうした?」
「ちょっと烏養さんにお話があって」
「俺にか?」
「なんだよ、烏養。モテモテだなぁ」
「うっせー、直井。
そんなんじゃねーよ」
「今日の練習メニューについて抗議に」
「…ほらな」
「おぉ…」
「流石にあれはないと思います。
内容が高校生には相応しくありません。
プロでもそこまで根詰めてはしませんよ。
私は1週間のメニューとして提案したんですけど、まさか1日に全部組み込まれるとは思ってませんでした」
「いや、練習のやり過ぎってことはないだろ」
「 “ 焦ってもどうにもならない ” ですよ」
「!」
「付け焼き刃の技を覚えるよりも、今までやって来たことの反復練習をする方が効果的です。
今は焦らず、地道にゆっくりやるのがベストだと思います。
小手先の技術よりも土台ですよ」
「……分かった。
少なからず俺も焦ってたのかもしれないな」
「確実に、ですけどね。
周りが余裕なくてどうするんですか。
選手が焦った時、止められませんよ」