第51章 アップルパイ
「じゃあ行こっか」
「はい。
けど本当に良かったんですか?
寝てなくて。
まだ起床時間まで余裕ありますけど」
「波瑠ちゃんにばかり頼りきりじゃいけないから。
私に出来ることはやっておかないと」
「大袈裟ですよ」
「皆そう思ってるよ。
あ、先生。
おはようございます」
「あ、おはようございます」
「おはようございます、早起きですね」
「朝食作りのお手伝いに」
「そうですか、それはありがとうございます。
でも大丈夫ですよ。
ご飯作りくらい、僕にやらせてください。
そうでないと僕の仕事がなくなっちゃいますからね。
あ、でも配膳だけはお願いしたいです」
「分かりました。
波瑠ちゃん、戻ろ」
「え?けど…」
「先生もああ言ってくれてるし、ゆっくりするのが1番」
「あ、はい」
なんとなく申し訳ない気持ちになるが、それは武田先生も同じなのだろう。
技術指導は愚か、バレー経験もないのに監督という大役を担っている。
練習面は任せきりというのは、やはり気が進まないのだろう。
だからせめて何か役に立ちたい、と。
その気持ちを踏みにじる訳にはいかないな。
と思い、ここは大人しく引くことにした。