第51章 アップルパイ
朝、携帯の目覚ましで目が覚めた。
「あれ、私昨日…」
どうやってここまで戻って来たっけ?
ここまで自分の脚で歩いた記憶がない。
「…」
とりあえず皆を起こさないように静かに布団を畳みながら考える。
「あ…」
恐らく最後に交わしたであろう会話を思い出した。
あれ以降の記憶がないのだとすると、きっと眠ってしまったんだろう。
蛍がここまで運んでくれたのか。
また迷惑かけたな。
蛍の華奢な身体に負担を。
そのことを考えると自己嫌悪に陥る。
あとで謝っておこう。
「あれ…波瑠ちゃん早いね」
「あ、すみません。
起こしてしまいましたか?」
「大丈夫、どこか行くの?」
「武田先生の手伝いに」
「待って、私も行く」
「え、良いですよ。
清水先輩はもっとゆっくり寝ててください」
「良いから良いから」
起こした上に手伝わせる。
悪いことしたな。