第36章 教育
攻撃に長けてるだけじゃエースにはなれない。
攻撃、守備、そしてメンタルが秀でてなくては意味がない。
更衣室で制服に着替えてから帰路につく。
「遅い」
「ごめん」
ヘッドホンをつけ、壁に寄りかかっている蛍。
「山口くんは一緒じゃないんだ」
「サーブ練してくんだって」
「熱心だね」
「がむしゃらにやれば良いって訳じゃないでしょ」
「まぁね」
揃って歩き出す。
蛍は脚が長いけど、歩くのは比較的ゆっくりなようだ。
「波瑠さん、今日親居る?」
「居ないけど」
「じゃあ寄っても良い?家」
「良いよ」
「「「キャーキャー」」」
普段は静かな道である筈なのに、今日は女の子達の黄色い声が聞こえる。
「…煩い」
「騒がしいね」
こういう声苦手だな、一体どこから声を出してるんだろう。
「「「及川くぅん」」」
げ…。
数メートル先に居るであろう人物の名前に、思わず身体を強張らせる。
「遠回りしたいんだけど」
蛍も及川先輩のこと苦手なんだな。