第33章 危機
波瑠さんがボールを取りに準備室に中に消えた。
いつもならすぐに準備し終える筈なのに、今日は珍しく遅い。
何やってんだろ。
なんとなく胸に不快感が広がり、様子を見に行くことにした。
そこには案の定、力一杯にカゴを引いている波瑠さんが居た。
あの波瑠さんが引いているのに、カゴはビクともしない。
「何モタモタしてんの?」
君らしくもない。
「ごめん蛍、なんか今日動かなくて」
みたいだね。
「こんなの腰に力入れれば余裕でしょ」
波瑠さんの後ろから、支えるようにしてカゴを引く。
「…いつもより重くない?」
波瑠さんでも運べないし。
「だよね。
ロックかかってる訳でもないんだけど、ビクともしなくて」
ボールの入れ過ぎ…はないよね。
「あ、このボールだけ色違う」
ふと見ると、それは体育で使う白いバレーボール。
普通間違える?
こんなに分かりやすいものを。